242話  釣りの効率と非効率


 イトウを1匹釣ってみたいと、遠方から膨大な時間と費用と労力を使ってやって来る釣り師には、たいへん申し訳ないが、地元の釣り師は、やろうと思えばいつでもイトウ釣りができる。私はイトウ釣りが好きなので、飽きることはないが、それこそ飽きるほどやることができる。

 2014年のシーズンは相当気合をいれて、自宅にほど近い川に通いつめた。ほぼ毎日、朝4時半には川岸に立ち、6時ころまでせっせと竿を振った。晴れた日もあれば、曇も雨も濃霧の日もあった。おなじように皆勤賞をあげたい釣り人が対岸にひとりいた。それだけ通いつめた訳は、いったいどれくらいの確率で釣れるのか確かめたかったからだ。1ヶ月通って、ヒットしたのは3回、うち2回は釣り上げることに成功した。96pと75pである。あと1匹は80クラスであったが、目の前でフックアウトした。結果をみると、きわめて非効率で、無駄といってもいいくらいであったが、96p・9.8kgは現在のところ最大魚なので、無駄とはいえない。

私の釣友には、春と秋に遠方から来て、大河の岸辺に朝から夕方まで立ち、一心不乱に竿を振り続ける人がいる。あるとき大河でお会いしたら、「2週間たつが、イトウに触りもしない」言っておられた。その間、天気は晴天だけではない。雨も風もある。目の前にはとうとうと大河が流れ、ポイントといえるものはない。そこへ一投また一投と投げ込んでは、しずかにリールを巻く。まるで修行僧のような釣りである。定点釣りが苦手な私には到底できない釣りで、そんなことを2週間もよく持続できるものだと、いたく感動した。効率は悪いが、そのうちに劇的に巨大な獲物に恵まれるはずだ。

 いっぽう立ちこみ釣りの場合はどうか。私は河川情報の水位をみて、遡行する川を決める。いずれも自宅から30分から1時間の川である。外れももちろんあるが、季節がよければ、大体において釣魚の数を計算できる。ある河川のあるポイントは2回行けば1回はヒットする。そういった効率のいい魚のつき場を3つほど知っていれば、まずボウズはない。こちらは、数稼ぎに徹して、機械的にヤブ漕ぎ、立ちこみ、釣りあがりをつづける。結果はおのずから付いてくる。

 釣り人の車と人影ばかり追いかけて他人だのみの釣り場探しをする人がいる。一見効率がいい。土地に不案内な初心者ならしかたがないが、つねに他人の後追いをしていても、釣果に恵まれることはあるまい。あっちでつまみ食いし、こっちで浮気するようない釣り場遍歴では、ろくな釣りはできないだろう。現在では地図があり、カーナビがあるのだから、自分で釣り場開拓をしてほしいと思う。

 具体的な釣り場探しはどうすればいいのか。これは本波幸一さんとも意見が一致したのだが、1本の川を上流から下流まで、辛抱づよく探索して、自分の釣り場地図を作ることだ。私の場合は、長い時間をかけて、中小河川をしらみつぶしに歩き、四季を通じてポイントを見つけてきた。1本のホームリバーを作れば、おなじ手法で2本目もホームリバーも比較的容易に作ることができる。その2本の河川は、できれば性格のちがう川(たとえば湿原河川と山岳河川のように)であれば、視野はたいそう広くなるだろう。

 私はすでに25年間も宗谷を中心に道北各地を歩いて、釣りをしている。それでもまだまだ広い流域のほんの一部を知ったにすぎない。チライさんやトラコさんとイトウ談義をやっていると、稚内に近いのに私の知らない釣り場で大物をあげていたりするから驚く。年をとり、原始の川を歩くことはほとんどなくなったが、それでもヤブをこいで、原野や湿原の川に足を運ぶことをいとわない。自分の探した川で、思い通りの大魚にめぐり合ったときの喜びはたいへん大きい。

 効率と非効率はどちらも大事なのだ。非効率を重ねていくうちに効率がわかってくる。広く川を知り、魚を知ることが釣りの基本なのだ。