219話  2012年のイトウ釣り


 2012年のイトウ釣りは、数だけは120匹に達した。そのいっぽうで、90pを超える大物はゼロであった。明らかに大物は掛かったが、すべてバラシので、結果は出なかった。そのため毎年目標として挑戦している「100匹・100p」は成らなかった。これは課題として2013年に持ち越した。

 2012年のイトウ釣りを振り返ってみよう。数は1994年から2012年までの19シーズンで4回目となる年間100匹を達成した。9年ぶりのことであった。釣り師の年齢63歳でもそれだけ釣ることができたのは、イトウがどこに居るかという豊富な知識と川を広範囲に歩きつづける体力がまだ残っていたからであり、これには満足している。

 各月の釣果は、513匹、632匹(自己新)、725匹(自己新)、820匹、915匹、1013匹、112匹であった。なんといっても6月の爆発的な釣果が印象的である。本当にイトウがいる幸せな6月であった。

 釣れた時間帯をみると、午前中とくに5時台から8時台がよく、私は大方の釣り師と同様に午前中を得意としていることがわかる。夕方から夜は釣りをしないので、釣果がない。

 体長をみると、平均47.1pと過去19年間で4番目に小さい。これは90p級以上がゼロと30p級・20p級だけで57匹という小中学生イトウが多かったからだ。数を稼ぐために大物を避けたわけではないが、中小河川に偏った釣り場がこういう結果をもたらした。しかし80p級と70p級の合計では24匹釣っていて、過去最高だったことから、私にしてはごく普通の釣り方をしていたのだ。

 19年間通算では1601匹、80101pのイトウを釣ったことになる。これは私が釣ったイトウを仮に縦に並べると801mになるわけで途方もない。

 水温とイトウの釣果をみると、2012年でも11℃から19℃にコンスタントに釣っている。 

19年間の総計でも11℃から18℃がいずれも100匹を超えていて、この水温帯がイトウを活性化させることはまちがいない。中でも13℃から17℃がもっとも釣れる水温帯であり、15℃がベストであることは、釣り師の心地よい感覚にもぴったり合う。

天気とイトウの釣果をみると、曇が圧倒的によく、この傾向が2012年はとりわけ傑出していた。通算でみると、雨でも120匹(7.5%)を釣っている。雨に濡れることくらいで釣りを諦めてはいけないことがよく分かる。

イトウの川は、釣り師のみなさんがもっとも注目するデータであろう。2012年では私のホームリバーA川でふつうの釣果を得ているが、最近凝っているN川で大増産している。両川とも釣り人なら当然知っている河川である。A川とN川は私の右と左のドル箱であり、一方の川が悪条件なら他方の川に行けばいいわけで、たいへん重宝している。宗谷の川にはだいたいイトウが生息しているが、誰でも行けば釣れるというわけではない。釣り師はそれぞれ独自の工夫をして釣果をあげている。

使用したルアーでは、DDPanish66匹で断トツ1位、Sugar 2/3 Deep 12匹、Solid Tail Deep 11匹、RANGE VIB 9匹 、TIGRIS 20g 9匹、Sumari MD 8匹、SL17 3匹、MM13 2匹とつづく。ただし私はルアーのロストやトラブルや長い時間の不発がないかぎり、おなじルアーを使いつづけるので、上記がルアーの性能というわけではない。

ルアーのどのフックに食いつくかも調べている。腹フック(以下略)48匹、尾31匹、腹と尾9匹、腹スレ11匹、尾スレ14匹、腹と尾スレ7匹。ふつうイトウも含めてサケ科魚は腹を下から食いあがるが、30p級以下の小イトウはほとんど尾フックに掛かる。これは追いかけて後ろから襲うということを意味する。スレ掛かりしたイトウが32匹もいる。腹と尾の両フックに食いつくのは当然口が大きい大物である。

私は元南極観測隊員であるから、データをとることが習慣になっている。イトウ釣りをしながらさまざまなデータをとっているが、これを10年以上も蓄積するとなかなかおもしろい事実として浮上してくる。野村監督のデータ野球が話題になってから久しいが、データをきちんととっているチームは強い。これは野球だけではなく、イトウ釣りにもいえることなのだ。