201話  レストランK


 イトウの会冬の宴をイタリア料理のレストランK120日に開催した。いままでは会場が居酒屋やホテルの一室ばかりだったのが、ガラッと変わって柄でもなく洒落た店に集まることになった。その理由は、同レストランの2階のギャラリーで、私のイトウ写真展が開催されているからであった。

 金曜日の陽がどっぷり暮れたあと店に入った。案内されて海側の階段をあがると、ギャラリースペースがあり、イトウの写真20点が展示されていた。白い壁にきれいに並んだ作品は、病院の仮設のパネルとちがって、落ち着いた雰囲気のなかで立派にみえる。写真は間接照明や音楽に包まれるといっそう輝きを増すものだ。

 「オーッ、凄いや」と自画自賛して、まずは閲覧した。芳名帳も用意され本格的な展示会になっている。記帳した知り合いも多数いる。

 さてイトウの会の会員と会友がぞくぞくと集まってきて、11人の宴がはじまった。今回初めて来てくれた転勤族の釣り人もいる。なんと20年前の私を知っているというから、私も古くなったものだ。そのころ「北海道のつり」誌に釣行記を投稿したりしていたのだ。

 まずは私が写真展開催となったいきさつをのべた。そして泡立つシャンパンで乾杯。イトウの会として異例のお上品さである。それでもアルコールが体内にはいると、急に肩の力が抜け、うちとけて舌も滑らかに動く。

 メニューはまず生ハムのサラダが出た。つぎにタコとマグロのトロのカルパッチョ、さらによく分からないピザ、ブイヤベースとどんどん来る。給仕さんが料理を説明してくれるが、ほとんど誰も聞いていない。シャンパンがなくなると、ビール、ワイン。私は焼酎ロック。

イタリア料理店だが、われわれの雰囲気はわいわいがやがやと居酒屋風となってきた。バックにはジャズが流れるが、演歌のほうが似合う感じだ。われわれの宴席は一般のお客とは隔絶された2階なので、それほど迷惑にもならないだろう。

酔っ払うと口が軽くなる。極秘だったはずの釣り場もぺらぺらしゃべっちゃう。聞くほうは、けっこう記憶に残るので、いいネタ聞いちゃったとなる。とくに、実際の写真が壁に飾られているのだから、「あれマルマル場所でしょ」なんて誘い水をかけられると、もうガマンできない。「そうそうヤブの下にいるのよ」と白状してしまう。

それにしてもわがイトウの会は、宴会が好きだ。冬の宴、開幕祝い、夏の宴、忘年会とすくなくとも4回は主要メンバーが集まって飲み食いしている。川より酒場に通う回数のほうが多い会員もいる。

北国の冬は長い。イトウ釣りに禁漁期はないが、川が厚く結氷しているのだから、じたばたしても釣りようがない。ある会員は、ワカサギの穴釣りや、ネット作りに精を出しているが、大多数は「春よこい」と待っているだけだ。そんな冬に、イトウ写真展はまさに時期を得て、イトウ写真のそばでのイトウ談義はなかなかの好評を博した。

夜が更けて、閉店の時間が迫ってきた。私のイトウ抱っこ写真の前に並んで、ツーショット写真をリクエストされて、私は大もてである。写真のイトウが大きいので、見栄えがする。先シーズンのメーターイトウで面目をほどこしてよかったと思った。

22時半お開きとなった。まだまだ飲み足りない若者は、さらに夜更けの南稚内に出陣したようである。私は朝が早いので、そのまま帰宅の途についた。その夜自分よりでかいイトウと格闘する夢を見た。